さらばアメリカ

大前研一氏の新刊「さらばアメリカ」を読んだ。
さらばアメリカ
題名からは大前研一氏がアメリカを見捨てたような感じが受けるが、英語の題名は「So long,America! until yoou come back to yourself」となっており、昔の他者に寛容だった時代のアメリカに戻ってくれ!という願いが本書に込められている。

内容は、前半ではブッシュ政権時代の外交政策サブプライム問題をとおして、アメリカ人がいかに傲慢になってしまっているか、そしてそれによりいかに世界から孤立してしまっているかが述べられている。

さずが世界中に豊富な人脈を持っている大前氏だけあって、内容は具体的で面白い。素人は新聞等で個々の事件の記事を読んでも、その問題の全体像を掴むことは容易ではないが、大前氏のフィルターを通すと、素人でも理解しやすく、かつ面白く書かれている。これが大前氏の著書の醍醐味である。

後半は、どうしたらアメリカが立ち直れるかが書かれている。大前氏によると、アメリカは個人消費の源であったの金融が壊滅的なダメージを受けたので、復活するためには10年掛かると予測している。そして今アメリカが行わなければならない事として以下のことを上げている。
(1)世界に対して謝る
(2)世界の一員になる
(3)戦争と決別する
アメリカは、さんざん周りに暴力をふるってクラスから孤立した、ドラえもんで言えば「ジャイヤン」のようになっており、もう暴力を使うのを止めてみんなに謝り、そしてみんなと一緒になって今回の危機や各地で起きている紛争問題に対処しなければならない、としており、オバマ氏ならそれをすることができる! としている。
(結局今回の危機を回復させるウルトラCはなく、地道に問題を解決するしかないのだろう。)

本書は金融だけでなく、政治、外交、ジャーナリズムをとおして、おかしくなったアメリカの実体が書かれており、特にジャーナリズムに関する記述は他の本ではなかなか見られない内容で興味深かった。

アメリカ経済がITによって目覚ましく復活した1990年代後半から、アメリカのジャーナリズムは「もはやアメリカにかなう国はない」「世界経済の半分はアメリカが支配している」といった傲慢な内容が目立つようになってきたそうだ。国民もだんだんそのような考えを持つようになり、ブッシュ政権の失策を招く土壌が出来上がってしまった。

日本も今、日本の将来をどうするか選択する時期に来ている。それなのに日本のマスコミは政治に関して、どうでもいい、大衆受けする表面的なことしか報道しない。もっと日本の将来について真剣に考えてもらいたいものである。

このままだと「失われた10年」が繰り返されそうでとても不安だ。

今まで通りの豊かな生活をこの先も送りたかったら、マスコミの報道を鵜呑みにせずに、個々がしっかりするしかないのだろう・・・・

結局、「自分の身は自分で守れ!」 と言うことだ。