借金の底なしで知ったお金の味

著者の金森重樹という人は、今ではマーケティングの分野では有名な人らしいが、私は全然知らなかった。いくつかのブログで絶賛されていたので、本屋で手に取ってみた。最初パラパラとめくってみたときは、1600円出して買うほどでもないかな−と思っていったんは元の所に戻したが、帰るときになってもなんとなく気になっていたので、ついつい買ってしまった。今では買って後悔はしていないどころか、子どもが大学生になったらぜひ読ませようと思うほど、のめり込んでしまった。

本書は、著者が東大に合格して、岡山から東京に出てきた時からの経験が語られている。上京早々、吉祥寺の服屋で騙されて総額83万円の服の契約をしてしまった事から始まり、東大での著者の人生最大の落とし穴は、20代半ばで、ひょんな事から商品先物取引をする羽目になり、負けを取り戻そうとして、あれよあれよという間に何千万もの借金地獄に堕ちてしまう。

その後お金を貸した人のすすめでマンション販売会社に就職する。さすが東大出だけあって、ここでマンション販売に関する儲かるためのツボを修得し、現在の活躍に至る基礎を築いた。

この本の特徴は、著者が非常に勉強家なので、経験した個々の事例について、客観的な解説も織り交ぜながらに書かれていることである。著者が借金地獄から抜け出すことができたのは、ただがむしゃらに頑張ったのではなく、どうしたら抜け出せるか、具体的に自分で調べたり、人から聞いたりして考えたからである。

この点がいい大学を出た人とそうでない人との違いだと思う(言っときますが、私はべつにいい大学を出たわけではないです)。いい大学をでた人は、頭がいいのはもちろだが、何よりも優れているのは、どうしたら高得点を取る事ができるのか? とその方法論を考え出せる能力だと思う。

何回やっても上手くならない人がいるが、その人はどうしたら上手くなれるかという方法をなかなか見つけられないからだと思う。

そしてどうしたら上手くなれる方法を見つけられるかというと、それを見つけようとする探求心の違いだと思う。上手な人をよく観察したり、人にしつこく聞いたり、本で調べたりして、なんとかしてうまく行くコツを見つけようとする。その意欲の違いだと思う。

著者も仕事帰りにマックに寄って、閉店まで儲けるために必要ないろいろな事を勉強をした。だから最終的に1億2千万まで膨らんだ借金が返せたのである。

もし借金で苦しんでいる人がいたら、ぜひ本書を読むべきだろう。収入が少ない人も本書を読めば、なぜ自分の給料が低いのか分るだろう。

本書を読めば、なぜ豊かな人がいて、貧しい人がいるのか? 社会の掟がよく分る。子どもがある程度大きくなったらこういうことも教えるべきだと思う。

そしてマンション買おうと思っている人も、この本はマンション業界の裏が分って面白い。私はマンションを買う予定はないが、この不況が底をついたら不動産株を買おうと思っていた。本書を読んで、この業界の掟を知ることができた。これだけでも本代の元は取ったと思う。
借金の底なし沼で知ったお金の味 25歳フリーター、借金1億2千万円、利息24%からの生還記