国債の歴史

国債の歴史―金利に凝縮された過去と未来
藤巻さんの本を読んで国債について興味をもったので、どっかのブログで評判がよかったこの本を図書館で借りてきて読んだ。

上下二段で500ページ以上あるのでもちろん全部は読んでいない。内容は題名の通りイギリスやドイツなど世界の国債の歴史について書かれている。投資に参考になるのは最初の序章「市場の警告」だ。

ここ10年の日本の債務残高の激増について書かれている。ポイントをまとめると

1.歴史的に見て異常な低金利が続いているのは、日本の期待インフレ率が低いから。
フィッシャー方程式によると国債金利国債金利=実質金利+期待インフレ率+リスクプレミアムで決まる。
冷戦の終結に伴って東欧、中国、インドが国際社会に進出してきたことで、低賃金の労働者が多数生まれ、物価に下落圧力がかかった。特に日本はそれに加えて期待成長率も低いのでなおさら期待インフレ率が低い。  

2.実は日本は名目成長率よりも金利が高い。
日本経済全体で見ると、銀行は預金で集めたお金を経営者に融資して稼ぐよりも、国債を買って運用した方がリスクが低い上に楽で儲かるということになる。だから国債を大量に発行しても銀行が喜んで買うので、売れ残ることがない。しかし新しい産業が育たず、日本経済の成長力が上がらないという副作用を日本経済にもたらしている。

3.「日本は国債を自国で賄えるから債務残高が増えても問題ない」という考えは間違い。
新聞で国債に関する記事では、新規国債発行額がどうのこうのというものが多い。30兆円とか40兆円とかの数字が踊っているが、なんてことはない日本は毎年100兆円以上の国債を発行しているのである。

以下11月22日の日経の記事

普通国債発行、140兆円超 新規・借換債、10年度計画最大に
 政府が12月下旬にまとめる2010年度の国債発行計画で、新規国債と借換債を合わせた普通国債の発行額が初めて140兆円超となり、過去最大を更新する見通しであることが明らかになった。これまで発行した国債の返済に充てる借換債が100兆円規模に上り、新規国債も44兆円規模と当初予算ベースで過去最大の見通しとなるためだ。
 普通国債は借換債と新規国債を合わせたもので、利払いや償還財源を主に税財源で賄う。10年度の普通国債発行額は09年度の当初予算ベースに比べて20兆円前後増え、これまで最大だった06年度の約138兆円を上回る公算が大きい。


日本政府は毎年赤字経営をしているので、当然自転車操業だ。借金の返済に借金したお金を当てている。この流れがいつまで続けられるかが、日本が破綻しないかどうかの重要なポイントだ。

本書によると今後のシナリオとして以下の事が考えられるらしい。
・市場で全額ファイナンスできなくなって、日銀で買い取ってもらう→円の価値↓→インフレ期待率↑、リスクプレミアム↑→国債金利
増税→国外への資本逃避


国債金利が上昇すれば、市場の国債価格が下落する。銀行での預金の大半が国債で運用されているので、銀行は預かった金を預金者に返せなくなるリスクが高まるり、取り付け騒ぎが発生するかも・・・
そして当然、国家予算は利払いに追われ、福祉に使うお金が減らされる。
さらに増税により国外へ資本が逃避すれば、日本での雇用が減り、納税額も減る。

日本は恐ろしい悪循環に襲われることになる。

よって日本政府が今しなければならないことは成長率を上げ、国債に頼らない運営をすることである。
池田信夫をはじめとする多く人が「バラマキよりも日本の潜在成長率を上げよ」と言っているが、鳩山さんは真剣にそのことを考えないと、取り返しがつかないことになる。

あー恐ろし


追伸
要はこういう問題意識を国民全体で共有して、痛みを受け入れながら社会構造の転換を図ることが重要だ。だがまだ一部の人しかこの問題性を充分理解していない。

しかしそれも徐々に改善されているのかも。今さっき図書館から電話が来た。

「次の予約が入ってますので早く本を返して下さい」と。

こんな分厚くてつまらない内容の本、読む人いるんだ。