金融大崩壊(アメリカ金融帝国の終焉)①

金融大崩壊 「アメリカ金融帝国」の終焉 (生活人新書)
本書の特徴の一つに、16世紀に資本主義が始まってから現在に至るまでの、アメリカの経済の流れが分かりやすくまとめられていることである。その内容を簡単にまとめておく。



・16、17世紀〜1968年頃まで
 資本−国家−国民の三位一体の関係(win-win-winの関係)
 その後ベトナム戦争により、インフレが過熱
・1971年のニクソンショック(ドルと金との交換停止)
 73年にオイルショックが襲う→米国がスタグレ−ションに陥る
 財政支出を増やすとインフレに拍車がかかるようになる
 →財政支出による景気対策というケンイズ主義に基づく「大きな政府」を継続するのが困難になる
 先進国では74年から企業の利益が上らなる(30年以上続く)
新自由主義(政府の介入を極力小さくする)の登場
 レーガノミックス労働分配率を下げ、資本側のリターンを増やす)の実施
 プラザ合意→ドル安誘導
・95年ルービン財務長官の登場→強いドル政策
 米国が金融帝国としての地位を確立
 金融経済が実物経済よりも強くなる
 レバレッジを効かせた投資により巨額の利益を得る(94年以前と比べて100倍もの資本を稼ぐ)
・ITバブル、住宅バブルの崩壊




つまり、アメリカは1974年ごろから企業の利益が伸びなくなり、それにより政府は「大きな政府」を維持できなくなって、新自由主義の考え方(小さい政府)が導入されるようになった。それにより労働分配率を下げ、資本側のリターンを増やしていこうとする考えが、政策の基本となった(レーガノミックス)。プラザ合意でドル安基調にもっていくも、アメリカの経常収支は赤字が続いた。そこで95年にルービン財務長官が就任すると、それまでの経済学の常識に真っ向から反する考え方であった「強いドル」政策が導入され、アメリカが金融帝国として歩み始めることになった。

世界的に金融経済が実物経済を凌駕するようになり、95年から2007年までには、世界で金融資産が120兆ドルも増え、金融経済が実物経済を振り回すようになった。