まぐれ

まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか
自分がたまたま本屋でこの本を手にとって見ただけだったら、ぜったい買わない本だ。

作者は(元?)トレーダーで、大学で(も)不確実性を教えている人だ。書いてある内容は、人間の物事に対する「捉え方」が、いかに不正確か、ということが、ウオール街のトレーダーの話を中心に、たくさん書かれている。

例えば、たまたま相場の読みが当たって、大もうけしたトレーダーが、自分は優秀だ、と勘違いしてしまうことや、旦那は世間から見たらとてもいい給料をもらっているのに、住んでいる高給アパートの他の住人達がもっといい給料をもらっているので、自分の旦那は無能だと思ってしまう奥さんなどの話が豊富に出てくる。

言われてみれば、当たり前のことが書かれているので、誰かに勧められないと買えない本だ。私は勝間さんが勧めていたので買った。ただし、この本に書かれていることは、もし自分が当事者だと、なかなか気づけないことが書かれている。

著者の意見の論証が、確率論をもとにされているので、少々読みにくい。しかし、がんばって最後まで読み続けると、もうこれだけ株価が下がったのだから、もうこれ以上下がらないだろう、とか、あの有名な経済評論家が来年後半には米国の景気が回復すると言っていたから、そろそろ株を買っておこう、とは簡単に思わなくなる。そしてつねに最悪の事態を想定して考えられるようになり、自分の実力を過大評価せず、謙虚さを身につけられるだろう。

「今まで見た白鳥がすべて白だからといって、白鳥がすべて白とは言えない。まれに黒い白鳥が出現することも、ないとは限らないのである」(現にオーストラリアには黒の白鳥がいるらしい)

バブルに踊らされたくない人は、ぜひ一読することをお勧めする。