コラム:貿易赤字基調でも円が買われる理由=佐々木融氏(ロイター)

コラム:貿易赤字基調でも円が買われる理由=佐々木融氏(ロイター)
http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPTYE86P01V20120726?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0

昨日発表された今年上半期の日本の貿易収支は、2.9兆円の赤字となった。第2次オイルショックで輸入が大幅に増えた1980年上半期の2.6兆円を超える過去最大の赤字である。こうした統計などを元に、「貿易赤字でも円が買われる理由は何か」との問いに対する回答を考えると、以下のような4つの点が指摘できる。

所得収支や外国人投資家の日本株・債券投資による円買い(すべてが円買いを伴うとは言えないが)を考慮すると、貿易赤字などから発生する円売りをかなりの部分相殺している可能性がある。

次に、欧州周辺国の財政問題などで「リスクオフ」となっている期間が長期化する中、日本が抱える250兆円もの対外純資産の国内回帰や為替リスクヘッジのための円買いが増加している可能性がある。

第三に、海外主要国の金利が低下していることもあって、日本人投資家の対外証券投資に絡む円売りが減少している(貿易赤字で円売りが増えても、対外証券投資の円売りが減少してしまっている)。

最後に、外貨の調達コストが大幅に低下しているため、対外直接投資が円売りではなく、外貨調達で行われるケースが増えている可能性がある。

円高を解消するには、やはり個人投資家ががんばって円を売って海外投資するしかないな。