ルポ貧困大国アメリカ

久々の更新です。
現在は、中国と米国に投資している。中国については昨年末に実際に現地に行ったので、どのような国か多少分るが、アメリカへは行ったことがないので、マスコミを通して見たイメージしか持っていない。

そこで夏休みを利用してニューヨークに行くことにした。それにあたってアメリカについて勉強しようと思い、第一弾目として堤未菓さんの「ルポ貧困大国アメリカ」のⅠとⅡを買って読んでみた。

まず目次の紹介。

「ルポ貧困大国アメリカ」
第1章 貧困が生み出す肥満国民
第2章 民営化による国内難民と自由化による経済難民
第3章 一度の病気で貧困層に転落する人々
第4章 出口をふさがれる若者たち
第5章 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」

「ルポ貧困大国アメリカⅡ」
第1章 公教育が借金地獄に変わる
第2章 崩壊する社会保障が高齢者と若者を襲う
第3章 医療改革VS医産複合体
第4章 刑務所という名の巨大労働市場


これらの内容からアメリカの恐ろしいすべり台社会が感じられたので、ここに紹介します。


(1)ミドルクラスから貧困層への転落する主なケース
・世界一高い医療費による借金地獄へ
 高い保険料(家族4人で年間9086ドル)を納めているにも関わらず、民間の医療保険のカバー範囲は限定的で、入院する事態になったらかなり高額な自己負担を強いられる。クレジットカードで支払っていくうちに自己破産へ。通常の保険料プラス高額な自己負担が生活を圧迫し、クレジットカードに頼った生活になり、最後は自己破産に追い込まれる。
・厳しい老後→高齢者のカード破産の増加
 高い医療費と物価が高齢者を追い詰めている。企業年金がよくない人が、病気などで働けなくなると一気に転落する。GMのように務めていた会社が破産したり、株価が低迷すると(アメリカの企業年金は401Kなので)、一気に生活が厳しくなる。
・高騰する教育費
 高卒ではマクドナルドなどでの仕事しか着けないので、ミドルクラスの人は大学を目指すが、大学の授業料が高いのでみんな学資ローンを利用する。昔は、政府の低利の奨学金制度があったが、いつの間にか民間の奨学金制度にとって変わられており、学生は高額な金利の借金を負っている。卒業後、給料の仕事に着ければいいが、そうでなければ、返済がとても厳しく、また学資ローンは消費者保護法から除外されているので、自己破産ができない。返済が滞ると、債権が資金回収業者に転売され、厳しい取り立てに追われることになる。しかも、返済が滞ると金利が上がるため、働いても働いても借金が増えていく。

(2)貧困者がさらに貧困に追い込まれる(貧困スパイラル)主なケース
・経済的な徴兵制
 高校卒業後、大学の授業料を得るために徴兵制に応募する。イラクに送られ、致命的な怪我を負うか、精神を病んで、帰国後まともに働けなくなる。しかも、それらの人に対する国の保障も貧弱。
 高額な給料をエサに戦場でのトラック運転手などの仕事に派遣する派遣業がアメリカにはあり、これらの仕事に就いた人が、現地で負傷して、帰国しても満足に働けなくなる。これらの人は兵士ではないので国の保障はまったくない。
・刑務所の民営化
 アメリカでは民営の刑務所が増えている。なぜなら、儲かるからである。アメリカの刑務所は、発展途上国よりも安い労働力をうたい文句にアメリカ企業から、電話のオペレーターなどの仕事を請け負って、囚人にかなりの低賃金で働かしている。しかも、囚人からは1日1000円くらい宿泊料?を徴収しており、歯磨き粉なども巷の相場よりもかなり割高に販売して、囚人から暴利をむしり取っている。当然、満足な社会復帰プログラムは行われていない。刑務所から出所した人はみんな借金を背負っており、それが仇で就職が断られる人もいるとのこと。警察もこれらの刑務所の味方で、些細な犯罪でも積極的に捕まえて、刑務所に送っているとのこと。
・肥満になりやすい
 貧困者は値段が安いジャンクフードを主食とする人が多いため、肥満になりやすい。肥満になると働きが鈍くなり、いい仕事に就けなくなる。


感想
 アメリカはリーマンショック前から、イラク戦争などへの戦費の増大が、教育や医療への予算削減を招いており、国民社会が徐々に衰退していた。また、医療保険会社や学資ローン会社などが、献金により政治家を上手く取り込んで、民衆に気付かれないように制度や法律を自分たちの都合のいいように変えて、暴利を貪っている。これは国民が政治に無関心だったのも、原因の一つだ。

 日本国債ギリシャみたいに暴落したら、上昇した国債の利払いでかなりの予算を取られるので、医療や教育への予算が削減されるのは間違いない。日本人の政治への無関心(特に若者)と合わせて、これは日本の未来を表しているのではないかと、この本を読んで背筋が寒くなった。